▶︎ Taylor'sの学生に聞いてみた(1)
更新日:3月3日
テイラーズ大学(Taylors University)は、マレーシアのセランゴール州スバン・ジャヤに位置する私立大学です。1982年に設立され、マレーシアでも最も名高い私立高等教育機関の一つとされています。
中でもビジネス学科やホスピタリティ学科は人気が高く、マレーシア人だけではなく多くの留学生たちが学んでいます。今回は、インターナショナルオフィスでも学生のサポートのお手伝いをしている学生さんにお話を聞くことができました。

記者:今日はマレーシアのテイラーズ大学での学びについて色々とゼネラルに話を聞かせてください。先程、ホスピタリティ学科の生徒の実地練習のための模擬レストランに伺いました。学科の学生さんたちが厨房では料理を作り、ホールではお客様にサービングをしていました。私にとっては初めての環境だったのでとても面白かったです。
私の個人的な見解ですが、カレッジや専門学校としては日本でもこういった専門知識を学ぶ環境はあるのですが、ホスピタリティ学科と言う学部を運営する大学は日本では少ないのではないでしょうか。ここテイラーズ大学では高級ホテルや有名レストランで経験を積めるインターンシップの機会も提供しており、他の大学と比べてもその提携先は充実していると感じます。ホテルやレストランの運営に関する教育も、サービングからマネジメント、ビジネス、経営まで幅広くカバーされていて、専門的に学ぶことができます。また、セカンドメジャーのような形で他の分野を追加で掘り下げて学ぶことも可能です。
学生:そうですね。特に、ホスピタリティ学科では8割以上がインターナショナルの学生らしく、日本人も結構多いと聞いています。テイラーズ大学自体がホスピタリティやビジネス分野で有名なこともあり、世界中から学生が集まってきているんだと思います。




記者:私はビジネス教育の分野においてはまだまだかなり疎いので、ぜひお話を聞かせて下さい。テイラーズではビジネス分野に関しても人気が高いのでしょうか?
学生:はい、ビジネス学部もとても人気があります。例えば、ローカルの学生でもビジネスを学びたい場合、マレーシア国内ではテイラーズ大学が第一候補になることが多いそうです。シンガポールの大学に進学するケースもありますが、テイラーズ大学の卒業生は関係社会とのリレーション(関係性)を築きやすく、企業からの評価も高いと聞いています。
記者:なるほど、ビジネス分野のカリキュラムについて少し教えてもらえますか?
学生:私の専攻はインターナショナルビジネス&マーケティングです。しかし、それだけではなく、会計学や統計学、金融学など、ビジネスに必要な要素も幅広く学びます。例えば、入学最初の2学期では統計学と会計学を学びましたし、今後は企業家精神(アントレプレナーシップ)や国際金融、さらには「インターナショナルビジネス」という授業も予定されています。
記者:かなり幅広い分野をカバーしているのですね。
学生:そうなんです。私の専攻は全体的にいろんな分野を少しずつ学ぶ形ですが、ビジネス学部の中には特定の分野を専門的に学ぶコースもあります。例えば、会計専攻の学生は、最初の学期から会計に特化した授業が始まり、卒業までほぼ会計関連の科目を学び続けます。そのため、卒業後は会計事務所などに就職することを前提としたカリキュラムになっています。
記者:専門的な知識を深めたい学生にとっては、とても魅力的な環境ですね。
学生:はい、テイラーズ大学は実践的な学びが充実しているので、将来に直結する知識やスキルを身につけられる点が大きな魅力だと思います。
記者:日本の経済学部についてですが、どのような印象をお持ちですか?
学生:日本だと経済学部といっても、想像がつく範囲が限られていると思います。例えば、私の弟は経済学部で会計や経営を学びました。公認会計士の資格を取りたかったんです。でも、実際に大学で学ぶ会計の内容はほんの一部で、資格取得には十分ではありませんでした。
記者:それで、ダブルスクールに通ったということですか?
学生:そうなんです。結局、公認会計士になるためには、大学の学びだけでは足りないので、ダブルスクールに通って資格取得を目指しました。3年間、いや4年間だったかな。日本だと、大学のカリキュラムだけでは専門的な資格取得に必要な知識がカバーしきれないことが多いんですよね。
記者:海外の大学では、そのあたりの事情はどうなんでしょう?
学生:海外では、大学のカリキュラム自体が資格取得を意識したものになっていることが多いです。例えば、公認会計士を目指すなら、必要な知識を大学の授業の中でしっかり学べるようになっているので、わざわざダブルスクールに通う必要がない場合もあります。
記者:会計士の資格についてですが、国ごとに取得方法が異なると聞いたことがあります。
学生:はい。公認会計士の資格は、日本とアメリカでは全く異なりますし、基本的にその国ごとに取得しなければなりません。弁護士資格も同じですね。資格というのは、基本的に各国の政府が認定して発行するものなので、法律が変われば資格の要件も変わることがあります。
記者:法律関連の学びについてですが、ビジネス学部でも法律を学ぶことができるのでしょうか?
学生:はい。法学部とは別に、ビジネス学部にも法律学科のようなコースがあることが多いです。日本だと法律は法学部で学ぶのが一般的ですが、海外ではビジネスの視点から法律を学ぶ機会も多く、実務に直結した内容になっています。

記者:日本の大学と比べて、海外の大学の学び方には違いがありますか?
学生:全然違いますね。日本の大学は、正直なところ、そこまで真剣に勉強しなくても卒業できる印象があります。私自身、日本の大学ではそれほど勉強した記憶がないんです(笑)。でも、海外の大学は課題が多く、学ぶ姿勢が求められます。
記者:具体的に、海外の大学ではどのように評価されるのでしょうか?
学生:科目によりますが、基本的にテストの点数だけで評価されることはほとんどありません。通常、評価は3つの要素で成り立っています。1つ目が個人課題(インディビジュアル・アサインメント)、2つ目がグループ課題(グループ・アサインメント)、3つ目がプレゼンテーションやプロジェクトなどです。
記者:個人課題とは具体的にどんなものですか?
学生:例えば、1つのレポートが2,500〜3,000ワードくらいのボリュームになります。企業を選んで、ある経営理論を基に分析し、その企業の成功要因や課題を探るといった内容が多いですね。単なる作文ではなく、学術的な観点から深く分析することが求められます。
記者:グループ課題はどのように進められるのですか?
学生:科目によりますが、個人課題と同様に企業分析をすることが多いです。加えて、企業へのインタビューが求められる場合もあります。実際に企業にアポイントを取り、インタビューを行い、リアルなデータを元にレポートを作成するんです。
記者:実際に企業に話を聞く機会があるんですね!
学生:はい。私も以前、ファイナンスの授業で企業インタビューをしました。理論だけでなく、実際のビジネスの現場でどのように運営されているのかを学ぶ機会が多いのは、海外の大学の大きな特徴だと思います。
記者:海外の大学では、ビジネス学部でも人事マネジメントの授業があると聞きました。具体的にどのような課題があるのでしょうか?
学生:はい、例えば私が受けたヒューマンリソースマネジメントの授業では、主に二つのグループ課題がありました。一つ目は模擬面接で、グループ内で面接官役と応募者役に分かれ、先生の前で実際の面接を行いました。その準備として、A4用紙20ページほどの資料を作成し、企業の概要や採用プロセスについてまとめました。その様子をビデオに収め、プレゼンテーションを行うのが課題の一つでした。
記者:実際の面接のような体験をするのですね。もう一つの課題はどのような内容でしたか?
学生:二つ目の課題は、企業の人事担当者にインタビューを行うものでした。具体的には、10人以上の規模の企業のマネジメント層にコンタクトを取り、ヒューマンリソースマネジメントの手法について調査します。ただし、企業によってはインタビューを受け付けてもらえない場合もあります。その場合、インターネット上の情報を活用してリサーチを行い、分析を進める必要がありました。
記者:実際の企業の人事部に話を聞く機会があるのは、貴重な経験ですね。インタビュー相手を見つけるのは大変ではありませんでしたか?
学生:そうですね。例えば、私たちはスターバックスやオールドタウンコーヒーなどの店舗へ直接行って店長さんに話を聞こうとしましたが、大手企業は個別のインタビューを受け付けていないことが多く、断られてしまいました。そこで、私の場合は元上司や家族のつてを活用して、企業のマネジメント層に直接アプローチしました。例えば、弟がマネージャーをしているので、彼を通じてインタビューの機会を得ました。
記者:なるほど。人脈を活用するのも一つの手段ですね。それにしても、海外の大学は課題のレベルが高い印象を受けます。
学生:はい、日本の大学と比べると、求められるクオリティがかなり高いです。特にヒューマンリソースマネジメントの授業では、人事戦略が企業経営においてどれほど重要なのかを、理論と実践の両面から学びます。単に人事部の仕事として考えるのではなく、マネージメント層にとっても必須のスキルであることを理解しながら進めていきます。

記者:日本の大学との違いについて、どのように感じていますか?
学生:日本の大学は入学するのが大変ですが、卒業は比較的容易ですよね。一方で、海外の大学は入学自体はそれほど難しくないものの、課題や試験が厳しく、卒業するのが大変です。例えば、グループ課題や個人課題では、数千ワードのレポートを執筆する必要があり、分析力や論理的思考が求められます。
記者:なるほど。親の視点から見ても、どちらの大学が良いか考えさせられますね。
学生:そうですね。学問のクオリティを重視するなら、やはり海外の大学の方が良いと感じます。同じ学費を払うのであれば、日本の大学で4年間「時間をお金で買う」ような生活を送るよりも、海外の大学でしっかり学び、身になる経験を積む方が価値があると考えています。ただ、日本の大学には自由な時間が多く、その間にアルバイトや旅行、コミュニティ活動などを通じて社会経験を積めるメリットもあります。一方で、海外の大学は課題が多く、忙しい日々を送ることになります。
記者:それぞれの大学にメリット・デメリットがあるわけですね。では、日本と海外の大学の卒業後のキャリア形成の違いについてはどう感じますか?
学生:海外では、卒業した学部が就職に直結することが多いです。例えば、アメリカやイギリス、オーストラリアなどでは、学んだ分野によってキャリアパスが決まる傾向があります。日本では、文系・理系の枠を超えて就職するケースも多く、学部と職業が必ずしも直結しないことが一般的ですよね。そのため、日本の企業は新卒社員に対して、入社後にOJTや研修を通じて育成する文化があります。
記者:確かに、日本の企業は新卒一括採用で人材を長期的に育てる仕組みがありますね。
学生:はい。日本の企業は新卒採用を重視し、長期間かけて社員を育成するため、入社時点で専門知識がなくても採用されやすいです。一方、海外では即戦力が求められ、企業が新卒社員に対して広範な研修を提供することは少ないですね。だからこそ、大学在学中にインターンシップを経験し、専門スキルを磨くことが重要視されます。
記者:なるほど。キャリア形成の方法も国によって異なるのですね。
学生:マレーシアの大学に来て感じるのは、何よりも「専門性の重要性」ですね。どの分野でもそうですが、その道を極めた人が一番早く仕事を取れるという現実があります。スキルがある人は評価されますが、スキルも知識もなければチャンスは少ない。企業が一から人材を育てるという文化はあまりなく、自分でスキルを磨いていく姿勢が求められます。
記者:なるほど、日本の大学と比べるとどうでしょうか?
学生:日本では、大学卒業後に「何をしたいか」を悩むことが多いです。有名大学に入ることが重視され、学部の選択は二の次という場合もありますよね。一方で、マレーシアの大学では「何を学び、どう活かすか」が重要視されます。企業も成績や学んだ内容をしっかり見ています。CGPA(GPAのような成績評価制度)も大切ですが、それだけではなく、何を学んだかが評価されるのが特徴的です。
記者:実際の授業についても教えてください。最初の頃は大変でしたか?
学生:最初の1学期は特に大変でした。授業の予測がつかず、言葉の壁もありました。IELTSのスコアを持っていたとはいえ、マレーシアの多様な英語アクセントには慣れるのに時間がかかりました。マレー系、中国系、インド系の人々が話す英語には独特の発音があるので、最初は何を言っているのか分からないこともありました。
記者:そうした言語の壁をどう克服しましたか?
学生:授業を録音して、最低でも2回は聞くようにしました。今はオンライン授業もあるので、学校のポータルサイトにアップされる講義動画を見直すことができます。でも、チュートリアル(少人数制のディスカッション授業)は録音も難しいのでとにかく細かにメモしながら反復で質問をし、理解を深めていきました。
記者:理解するまでに時間がかかることもあったのでは?
学生:はい。最初に授業を聞いたときは、「何が分からないのかすら分からない」状態でした。チュートリアルや復習を重ねることで、「そういうことだったのか」と少しずつ理解が進んでいく感じです。何度も繰り返し聞いたり、ノートを見返したりすることで、ようやくつながることが多いですね。
記者:勉強量もかなり多そうですね。
学生:そうですね。若い頃ならまだしも、年齢を重ねると記憶力も落ちるので、復習は必須です。でも、学ぶこと自体は楽しいですよ。もちろん、最初は大変ですが、次第にリズムがつかめてくると、学びが深まるのを実感できるので、それがやりがいにつながります。
記者:なかなか毎日がハードワークのように思えるのですが、どこかのタイミングで楽になってくるんですか?
学生:私は1学期目の間ずっとそのスタイルで頑張っていました。でも、途中でやめてしまったんです。正直な話、やめるとテスト前に大パニックになりましたね。試験範囲を見ても、授業のスライドを見ても、「何これ?初めまして」みたいな状態でした(笑)。授業には出ていたはずなのに、まるで知らない内容に見えてしまって…。
記者:そんな状態になると、試験前はかなり大変だったのでは?
学生:そうですね。試験前の2週間は、1日12時間くらい勉強していました。ほぼ食べて寝るだけの生活でしたね。それでなんとか試験を乗り切ったんですが、「もうこんなことは二度とやりたくない!」と思ったんです。そこで2学期目からは、計画的に勉強するようにしました。
記者:計画的に勉強するというと、具体的にどんな風に?
学生:毎日のスケジュールをしっかり組んで、授業の復習をその日のうちに終わらせるようにしました。
記者:なるほど。もうすぐ2年生になりますが、2年生は1年生とはまた勉強の量が全然変わってきますよね。
学生:そうですね。今は1年生の3学期目なんですが、今学期は最終試験が一つもないんです。代わりにレポート課題が中心ですね。個人課題もほとんどなくて、グループ課題とプレゼンがメインです。グループ課題とプレゼンをしっかりこなせば、試験なしで成績が決まります。
記者:グループ課題って、評価の仕組みはどうなっているんですか?
学生:基本的には全員同じ評価がつくんですが、科目によってはリーダーを決めて、そのリーダーがメンバーの評価をつけることがあります。例えば、「この子はあまり貢献していなかった」と判断されると、その子の成績だけ低くなることもあるんです。
記者:へぇ。リーダーは査定するんですね。全員で評価をつけ合う仕組みなどもあるんですか?
学生:はい、グループ全員がお互いを評価することもあります。例えば9人のグループで、8人が「この子はあまり貢献していなかった」と評価すると、その子だけ成績が低くなります。
記者:それって、社会に出たときの評価の仕組みと似ていますよね。
学生:そう思います。誰もが最初から専門職一本で生きていくわけではなく、いずれ部下を持ち、管理する立場になる可能性がありますから。そうなると、評価の仕方やフィードバックの受け止め方も重要になってきますよね。
ーーー続くーーー
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